CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とは?導入メリットや代表製品をわかりやすく解説(Vol.2)
- 公開日:
- 最終更新日:

昨今、より良い顧客体験を実現するための重要なマーケティングテクノロジーとして、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)が注目を集めています。
そこで本ブログ記事では、CDPを導入するビジネスメリットや機能概要、代表的なCDP製品を解説します。
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)とは?
CDP(カスタマーデータプラットフォーム、以後CDP)とは、様々なコンタクトポイントで収集されるデータを統合した顧客プロファイルの作成から、顧客へのメッセージングやオファーの最適化までを行うためのマーケティングテクノロジーです。
企業が製品・サービスの優位性を確保する際に、製品自体の品質向上だけでなく、顧客体験で付加価値を加えて差別化することが、今や必須となっています。
その「より良い顧客体験づくり」において、欠かせないテクノロジーの1つとなっているのがCDPです。
では、なぜ「より良い顧客体験づくり」のために、CDPが必要なのでしょうか?
結論から申し上げると、マーケター自身が分析から施策の実行までを実践できるようになり、
顧客体験の最適化・マーケティングROI向上・PDCA高速化が期待できる点が、CDPを導入する最大のメリットです。
そう言われても、少し一足飛びだと感じる方もいらっしゃるかと思います。
そこで次章より、様々なテクノロジーが存在する中でCDPが必要な理由を、順を追って解説します。
CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の導入メリットとは?
本章では、CDPが無い状態での顧客体験やマーケティング業務を考えることで、CDPの必要性を解説します。
CDPが無い状態として、次の2種パターンが挙げられます。
- CDPなどをツールを用いた顧客データ統合が全く行われていない場合
- CDP以外の類似ツールで顧客データ統合を行っている場合
これら2つのパターンについて、施策運用上のリスクを説明します。
顧客データ統合が行われていない場合
下図は、その状態で各コンタクトポイントでの施策を実行したイメージです。
前提として、顧客は様々なIDを保持しています。
顧客データ統合がされていない場合、企業はこれらのIDが同じ人物が保持しているものとは分からないままとなり、各コンタクトポイントのツール内で取得できるデータに閉じて施策展開することになってしまいます。
その結果、顧客へのメッセージングは個別最適化に留まってしまい、顧客体験の毀損や非効率な施策への投資となってしまうリスクがあります。
DWH(データウェアハウス)を活用して顧客データ統合を行った場合
CDPの類似ツールの代表格として、DWHが存在します。
前述の個別最適の状態を脱するために、DWHを用いた顧客データ統合を行うことで解決を目指すケースもあります。下図がそのイメージです。
DWHは大量のデータを蓄積・集計するユースケースでは強力なツールであるため、顧客が保持する様々なIDを同一人物のものとして特定・管理することは可能です。
一方で、DWHは一般的に、データ操作や施策ツール連携にはコーディングが必要なため、エンジニアによる運用が前提となります。
昨今は生成AIを活用したDWH上のノーコード分析機能も発達していますが、まだまだマーケター単独での運用には課題が残っているのが現状です。
結果、DWHだけではマーケター自身によるクイックな施策運用が困難なため、PDCAサイクルの低速化が懸念されます。
CDPを活用した顧客体験とマーケティング業務
まずデータ収集・統合の視点では、一般的にCDPは次の機能を保有しています。
1. 個人識別情報(例:氏名/メールアドレス)をもとにバラバラのIDを統合する機能
2. 顧客データモデルを定義する機能
3. これら機能を大量の顧客データに対して実行するための強力なバックエンドエンジン
特に1点目、2点目については、DWHの場合、自前で実装が必要でしょう。
一方で顧客データに特化したツールのCDPの場合、製品が提供する機能の中で、設定ベースで実装可能なケースも多々あります。
これらの機能を活用することで、様々なユースケースに対する顧客データ統合を実現できます。
ちなみに、DWHで顧客データ統合を既に実現している場合は、CDPをアクティベーション(*)の役割に特化させ、DWHとCDPがうまく共存する「コンポーザブルCDP」型で構成することも可能です。この辺りは、また別の機会に詳細を解説したいと思います。
* アクティベーション:セグメントをはじめとした施策に関するビジネスロジック管理と、施策ツールへの連携機能
次にデータ活用の視点では、CDPは統合された顧客プロファイルを用いて、ノーコードで顧客分析・セグメント作成・アクティベーションする機能を保有しています。
更には、顧客ファネルや施策シナリオなどのカスタマージャーニーをGUIで直感的に作成・管理できる機能を持つ製品も登場してきています。
これらの機能を駆使することで、マーケター自身が分析から施策の実行までを実践できるようになり、顧客体験の最適化・マーケティングROI向上・PDCA高速化が期待できます。
CDPに求められる機能には色々な考え方があると思いますが、私たちは下図のように定義しています。
1つ1つの機能要素については、今後ブログで掲載予定となります。
代表的なCDP(カスタマーデータプラットフォーム)製品3選
昨今、様々なCDP製品が存在しており、自社要件に合わせた製品選定が非常に困難になっています。
例えば、Customer Data Platform InstituteがWebサイト(引用元: https://www.cdpinstitute.org/)で掲載しているCDPベンダー数は、2025年5月時点で200以上に上ります。
その中でも、グローバル含めて実績があるエンタープライズ向けCDP製品 かつ 国内でも運用可能な3製品をピックアップして比較した結果をご紹介します。
Treasure Data(トレジャーデータ)
Treasure Dataは米国Treasure Data, Inc.が開発・提供するカスタマーデータプラットフォームです。CDP製品市場での国内シェアはNo.1と言われており、様々なユースケースへの対応実績が豊富な安心感があるツールです。
Treasure Dataについては、「Treasure Data(トレジャーデータ)とは?特徴的な機能や導入事例をご紹介(Vol.1)」で詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
Salesforce Data Cloud(セールスフォースデータクラウド)
Salesforceは米国Salesforce, Inc.が開発・提供する、カスタマーデータプラットフォームです。既存のSalesforceエコシステムとの連携が重要な場合に採用されることが多いツールです。
Salesforce Data Cloudは、顧客接点DX Webサイト内の「セールスフォースのCDPとは?特徴と活用方法を解説(Vol.54)」にて詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。
Hightouch(ハイタッチ)
Hightouchは、米国HighTouch, Inc.が開発・提供するComposable CDP(コンポーザブルカスタマーデータプラットフォーム)です。従来のCDPとは異なり、顧客データをCDP内で保持せずに、既存のDWHと合わせて必要な機能だけを提供する特徴があるツールです。
3製品の簡易比較
最後に、これら3製品を機能・国内実績の観点で簡易的に比較してみたいと思います。
QCDで言うと、QとDです。なお、要件によっては他製品との組み合わせで構成する必要もあるため、各製品単体でのコスト(C)は敢えて外した比較表としています。
Treasure Data | Salesforce Data Cloud |
HighTouch | ||
機能 | 外部連携コネクタ | ○ |
△ (Salesforce製品中心) |
○ |
データ加工の柔軟性 | ○ | △ | ― (機能なし/DWHが前提) |
|
ID統合機能 | ○ | ○ | ○ | |
セグメントGUI | ○ | ○ | ○ | |
ジャーニー作成 | ○ |
△ (別製品で保持) |
○ | |
各チャネルメッセージ配信実行 |
△ (25年4月に発表) |
△ (別製品で保持) |
― (機能なし) |
|
AIによる業務支援 | ○* | ○* | ○* | |
国内 実績 |
市場でのシェア | ◎ | △ | △ |
国内ユーザーコミュニティ | ◎ | ◎ | △ | |
日本語対応 | 対応済 | 対応済 | 未対応 |
*各製品のAI機能が多岐に渡るため、詳細には差異あり
本比較でご紹介したい点は、製品自体の優劣ではなく、機能の特性やカバー範囲に違いがあるという点です。
大切なことは、自社の環境分析をしっかり行い、その時々の最新情報を可能な限り自分たちの目で見極め、要件・予算に合わせた選定を行うことです。
まとめ
ここまで、CDPの概要について解説してまいりました。
CDPは、より良い顧客体験と、その裏側にあるマーケターをはじめとしたあらゆるビジネスユーザーの業務変革を実現するテクノロジーです。
そして、CDP製品はご紹介した3製品をはじめとして、様々な選択肢が存在します。
将来要件を考慮して製品選定を行うことは重要ですが、机上で考えるのは限界があります。
その時は、ミニマムのユースケースで実際に運用してみるのも手かもしれません。
また、製品紹介の最後に、可能な限り自分の目で見極めることが大切、とお伝えしましたが、CDPプロジェクトの計画にあたって何をどこまで検討すれば十分かを判断するのは、非常に難しいことだと思います。
電通総研では、CDP・顧客データ活用のプロフェッショナルとして「これからの顧客体験を発想して創る」ためのご支援をしております。
CDPの豊富な実績・ノウハウを体系化したサービスをご提供しておりますので、お悩みの際は、是非、電通総研までお声がけください。
◆ お問い合わせページ:https://data-management.dentsusoken.com/treasure-data/inquiry/
*本記事は、2025年5月1日時点の情報を基に作成しています。
製品・サービスに関する詳しいお問い合わせは、電通総研のWebサイトからお問い合わせください。
【筆者】
氏名:武藤 保貴(むとう やすき)
経歴:
2015年、株式会社電通総研入社後、
デジタルマーケティング領域の開発プロジェクトマネージャーとして複数の案件に参画し、
Treasure Dataをはじめとしたマーケティングプラットフォーム開発、コンサルティングに従事。