Treasure Dataの『Customer Journey Orchestration』とは?機能と使い方を解説(vol.5)
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昨今、LTV(顧客生涯価値:Life Time Value)の向上等を目的として顧客体験の最適化に注目が集まっています。
そこで本ブログでは、カスタマージャーニーに基づいたマーケティング施策を自動化して実行・管理し、顧客体験の最適化を実現するTreasure Data(トレジャーデータ)の機能、『Customer Journey Orchestration(カスタマージャーニーオーケストレーション)』について解説します。
Index
Treasure Data 『Customer Journey Orchestration(カスタマージャーニーオーケストレーション)』とは?
『Customer Journey Orchestration(以降、『CJO』と表記)』とは、顧客の属性データや行動データから思い描くカスタマージャーニー を自動化して実現することができるTreasure Dataの機能要素の1つです。
企業が抱える課題の1つとして「LTVの向上」がよく挙げられるかと思います。
『CJO』は、「継続的に最適な顧客体験の提供」を可能とします。具体的には、蓄積された大量のデータと豊富なデータ連携先を活用し、データに基づく分岐やアクティベーション(配信・データ連携など)といった次の章で説明する機能群を適切に組み合わせることで実現していきます。
また、『CJO』における全ての設定はGUI(Graphical User Interface)で可能なため、マーケターのみで設定を完結させられ、既存の業務を効率化していくことも可能です。
Treasure Data 『Customer Journey Orchestration(カスタマージャーニーオーケストレーション)』の主な機能
本章では、『CJO』に備わっている機能をご説明します。
『CJO』の機能は大きく以下の3つに分類できます。
- ステップ
- ステージ
- プロフィール※評価(※プロフィール:ジャーニーにエントリーされたユーザーのこと )
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ステップ
ステップはカスタマージャーニーを構成する部品のような役割を持っています。
様々な役割を持つ合計7種のステップをドラッグアンドドロップで並べていくことで思い描くカスタマージャーニーを表現できます。
- 分岐点
パスを条件分岐させるためのステップ
それぞれの分岐へ進むための条件をセグメントエディタ※で設定する。
※「Treasure Data『Customer Journey Orchestration(カスタマージャーニーオーケストレーション)』の使い方」における3.ゴールの設定にて使用イメージを説明。
- 合流
分岐したパスをマージさせるためのステップ
- A/Bテスト
プロフィールを設定したパスにランダムに割り当てることが可能 で、A/Bテストの評価に利用できる。
- 待機
ジャーニーの中でプロフィールを次のステップに進む前に特定の期間待機させるためのステップ。
設定可能な単位は「日」と「週」。
- アクティベーション
アクティベーション(=他システムへの出力)を実行するためのステップ。スケジュールを日次で選択し、決まった時間に起動させることができる。
- ジャンプ
同じジャーニーの異なるステージまたは同じペアレントセグメントに紐づく異なるジャーニーの任意のステージにプロフィールを移動させるためのステップ。
- 終了
視覚的に「これ以上アクションを実行しない」ということを示したい場合に利用するステップ。
ステージ
ステージは、動的に変化するプロフィールの属性/行動データに応じてジャーニーを使い分けたい場合などに利用できる概念です。
例えば、ステージをランクA/ランクB/ランクCに分けた場合、ランクBのプロフィールにはランクB向けの顧客体験を提供し、途中でランクが上下した場合も即座にステージを変化させ顧客の状況を反映した顧客体験を提供することが可能となります。そして、これを1つのジャーニーで管理することができます。
プロフィール評価
プロフィールを評価する機能は3つあり、ジャーニー全体のプロフィールに対する評価とステージ内のプロフィールに対する評価があります。
これらの機能を用いることでジャーニー内のプロフィールを最新の状態に保ち最適な顧客体験を提供することに寄与します。
- ゴール
ジャーニー全体の目標をセグメントエディタを用いて条件式で設定する。条件を達成したプロフィールは、ジャーニーから退場するか他のジャーニーの任意のステージへ移動させることができる。ゴールへ設定した条件は、全てのステージにいるプロフィールが評価対象となる。 - マイルストーン
ステージ毎に設定可能な項目で、設定するステージにおけるゴールのような役割を果たす。マイルストーンの条件を達成したプロフィールは、次のステージへ即座にエントリーされる(=次のステージのエントリー条件となる)。 - 終了条件
ルールを満たすプロフィールをジャーニーから退場もしくは他のジャーニーの任意のステージへ移動させることができる。
各ステージごとに設定可能な項目で、ルールの適用範囲は設定したステージ内に限る。
Treasure Data 『Customer Journey Orchestration(カスタマージャーニーオーケストレーション)』の使い方
ここからはシナリオを用いて、実際の使用方法を確認していきます。
シナリオは実運用を想定した内容ではなく機能紹介を目的とした内容となるため、各機能の設定イメージにご注目いただければと思います。
<想定シナリオ概要>
企業:一般消費者向けに日用品を販売する企業A
課題:ECの利用率に伸び悩んでいる
シナリオ:EC購入履歴の無い会員へのEC購入促進シナリオ
ジャーニーの作成~ゴールの設定
【前提】以下の項目は事前の作成が必要です。
・ペアレントセグメント(マスターセグメント)の作成。
・アクティベーションに利用するAuthenticationsの作成。
- ジャーニーを作成したいペアレントセグメントを選択します。
- 選択したペアレントセグメントの画面から新規作成→ジャーニー→必要事項を入力→作成へ進みジャーニーを作成します。
- 作成したジャーニーを開き、右上のゴールボタンからゴールの条件に合致したプロフィールの移動先を選択します。今回は購買いただいたプロフィールは別のロイヤル化シナリオへエントリーさせたいため、ロイヤル化施策ジャーニーに移動するよう「目的地の選択」から設定します。
次にゴールの条件を定義するために、編集アイコンを押下してセグメントエディタを開きます。
ルールにはシナリオの目標を達成したことがわかる条件を記載します。
今回であればECで商品を購入したことが分かるように、ビヘイビア(行動データ)から「purchase_source = ECサイト」&「purchase_status = 確定」という条件を選択して設定します。
認知ステージ
認知ステージではECサイトを認知してもらうことを目的としたカスタマージャーニーを構築します。
- エントリー条件:シナリオにエントリーさせるプロフィールの条件をゴールと同様にセグメントエディタで定義します。今回は会員登録済みであることを条件とします。
- マイルストーン:認知ステージのゴールは、ECサイトへの訪問履歴があることとし、この条件をセグメントエディタで定義します。
- 終了基準:マイルストーンやゴールに合致せず30日間ステージに留まり続けるプロフィールは除外させたいため、「古くなったプロファイル」を「30日」で設定します。終了基準ではルールに合致したプロフィールをジャーニーから退出させるか他のステージやジャーニーに移動させることができますが、今回は退出させたいだけなので「ジャーニーの外へ」を選択します。
- 分岐点:ECでの購入履歴有無に応じて分岐し、購入履歴のあるプロフィールは終了させることとします。まずは分岐点を配置し、分岐数を選択します。
次に、EC購入ありの場合となしの場合でそれぞれ分岐条件をセグメントエディタで定義します。
- A/Bテスト:配信チャネルの違いによって開封率にどう影響が出るかを検証する目的でA/Bテストを配置します。ここでは、LINE配信、メール配信、モバイル配信の3つに分岐できるようバリアントの数を3つに設定し、それぞれ25%ずつプロフィールが分岐するようカスタム設定を行っています。
- アクティベーション:LINE、メール、モバイル配信ができるツールにそれぞれプロフィールを連携させます。画像はLINEへのアクティベーション設定画面ですが、事前に作成したLINEへのAuthenticationを選択することでアクティベーション先を設定します。
- 合流点:チャネル別にアクティベーションを行った後は合流点でパスを合流させます。どのパスを合流させるかを選択可能ですが、今回は全てのパスを合流させます。
- 待機:アクティベーションによる配信結果、次の配信まで5日間空けたいため、待機ステップに到達したプロフィールを5日間待機させます。
- 分岐点:配信から5日後にメッセージの開封有無で分岐させます。
- ジャンプ:開封があったプロフィールは既に認知しているとみなし、興味関心ステージへジャンプさせます。
- アクティベーション:開封がないプロフィールに対してはリマインドとして、再度メールを配信します。
- 終了:リマインドを行ったプロフィールは終了させます。
興味関心ステージ
興味関心ステージでは商品に対する関心を高めてもらうことを目的としたカスタマージャーニーを構築します。
- エントリー条件:2つ目以降のステージでは、1つ前のステージのマイルストーンがそのステージのエントリー条件になります。つまり、認知ステージのマイルストーンとして定義した、ECサイトへのアクセス履歴があるプロフィールがエントリーされることになります。
- マイルストーン:興味関心ステージのゴールは、ECサイトの商品ページへのアクセス履歴があることとします。この条件をセグメントエディタで行動データを用いて定義します。
- 終了基準:認知ステージと同様にマイルストーンやゴールに合致せず30日間ステージに留まり続けるプロフィールは除外させたいため、「古くなったプロファイル」を「30日」で設定します。
- アクティベーション:広告配信ツールへアクティベーションし、広告を配信します。
- 分岐点:次に、購買意欲が高まるコンテンツを提供したいのですが、メール配信許諾がないプロフィールへはDMを送付したいため、メール配信許諾の有無で分岐させます。
- アクティベーション:メール配信許諾ありのプロフィールにはメール配信でコンテンツを提供し、メール配信許諾なしのプロフィールにはDM発送ツールへプロフィール情報を連携しDMでコンテンツを提供します。
- 合流点:アクティベーション以降では共通の施策を打つため分岐させたパスを合流させます。
- 待機:2週間待機させます。
- アクティベーション:再度商品紹介メールを配信します。
- 終了:これ以降のステップはないことを示す意味も込めて終了ステップを配置します。
比較検討ステージ
比較検討ステージでは、関心のある商品と類似商品を比較することで購買の後押しを行い、最終的に購買していただくことを目的とします。
- エントリー条件:2つ目以降のステージでは、1つ前のステージのマイルストーンがそのステージのエントリー条件になります。つまり、興味関心ステージのマイルストーンとして定義した、ECサイトの商品ページへのアクセス履歴があるプロフィールがエントリーされることになります。
- 終了基準:認知ステージと同様にゴールに合致せず30日間ステージに留まり続けるプロフィールは除外させたいため、「古くなったプロファイル」を「30日」で設定します。
- アクティベーション:閲覧履歴のある商品について他商品と比較しつつ紹介するコンテンツをメールで配信します。
- 待機:2週間待機させます。
- アクティベーション:再度商品紹介メールを配信します。
- 終了:これ以降のステップはないことを示す意味も込めて終了ステップを配置します。
ジャーニーの起動
- ジャーニーの設定が完了したら起動させ、実際に顧客へ体験を提供していきます。
まとめ
ここまで『CJO(Customer Journey Orchestration、カスタマージャーニーオーケストレーション)』の機能を紹介してきました。
『CJO』は蓄積された顧客の属性データや行動データから、マーケター自身で最適な顧客体験を創造し提供することができるTreasure Dataの機能要素の1つです。
その中でも基本機能となるのが、カスタマージャーニーを構成する部品の役割を担うステップ、動的にジャーニーを切り替えることができるステージ、異なる粒度でプロフィールの状況を監視するプロフィール評価でした。
これらの機能を組み合わせることで顧客体験を最適化し、LTVの向上をはじめとした様々な課題の解決を可能とします。
また、Treasure Dataは、CDPの枠を超えてMA領域の新機能であるEngage Studioを発表しており、CDPからMAまでオールインワンプラットフォームで提供していく方針を示しています。『CJO』はCDPとMAをシームレスに繋ぎ、その効力を最大限に発揮する重要な機能となるため、今後ますます充実していく機能の一つと考えられます。
まずは『CJO』の基本機能を抑えつつ、Treasure Dataのさらなる機能拡充とともに最先端の顧客体験を創造していくことで企業価値を向上させていくことができるのではないでしょうか。
電通総研では、CDP・顧客データ活用のプロフェッショナルとして「これからの顧客体験を発想して創る」ためのご支援をしております。
CDPの豊富な実績・ノウハウを体系化したサービスをご提供しておりますので、お悩みの際は、是非、電通総研までお声がけください。
◆ お問い合わせページ:https://data-management.dentsusoken.com/treasure-data/inquiry/
*本記事は、2025年7月1日時点の情報を基に作成しています。
製品・サービスに関する詳しいお問い合わせは、電通総研のWebサイトからお問い合わせください。
【筆者】
氏名:妹尾 麟太郎(せのお りんたろう)
経歴:
2023年、株式会社電通総研入社後、
デジタルマーケティング領域のソリューションエンジニアとしてTreasure Dataを中心としたマーケティングプラットフォーム開発に従事。