Treasure DataのAIエージェント『Audience Agent(オーディエンスエージェント)』とは? AIでマーケティング施策を効率化する方法を解説(Vol.6)
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昨今、AIによるマーケティング施策の効率化が注目を集めています。
2025年より、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)の代表製品であるTreasure Data(トレジャーデータ)に、AIエージェントとのチャットを通してCDPで保持するデータを用いた分析やセグメンテーションができる『Audience Agent(オーディエンスエージェント)』が搭載されました。
『Audience Agent』により、従来よりもスピーディーなデータ分析やマーケティング施策の立案/実施が期待できます。
そこで本ブログでは、『Audience Agent』の概要や主な機能、活用方法を詳しく解説します。
Index
Treasure Dataが提供する2種類のAIエージェント
Treasure DataのAIエージェントには、次の2種類があります。
- 『Audience Agent』:Treasure Dataが提供する、構築済みのAIエージェント
『Audience Agent』は、Treasure Dataからプリセットされた状態で提供され、顧客データ分析・可視化・抽出等のマーケティング分析に特化したエージェントです。
汎用的な分析要件に対応するために最適だといえます。 - 『独自エージェント』:AI Agent Foundryで作成する、様々な用途に特化したAIエージェント
AI Agent Foundryで作成した独自AIエージェントは、業務要件に合わせて自身で作成する必要がありますが、カスタマイズ性が高く、幅広いデータに対して柔軟な分析が可能です。
本ブログ記事では、前者の構築済みのAIエージェントとやり取りをする『Audience Agent』について解説します。
Treasure Data『Audience Agent(オーディエンスエージェント)』とは?
Treasure Dataの『Audience Agent』とは、AIエージェントとの自然言語のチャットを通して、Treasure Dataに蓄積されたデータを活用した分析やセグメンテーションができる機能です。
AIエージェントに質問をすると、Treasure Data内のデータをもとに構築された検索拡張生成 (RAG、Retrieval-Augmented Generation) を利用して、適切な回答をしてくれます。
Treasure Dataには元々、マーケター向けの直感的なUIでオーディエンスのセグメンテーションやキャンペーンの実行/結果の分析ができる『Audience Studio(オーディエンススタジオ)』という機能が備わっています。
『Audience Agent』は、Audience Studioのマスターセグメント(=セグメント作成のベースとなる顧客リスト)のデータと連携しており、本来Audience Studioの画面上で行うセグメンテーションを、チャット画面から自動で実施することが可能です。
データ分析からセグメンテーションまでをチャット画面ひとつで行えるため、業務をより直感的かつスピーディーに進めることができるでしょう。
*マーケティング業務効率化については「マーケティング業務効率化のためのCDP(顧客データ基盤)活用とは?Treasure DataのAI機能についてもご紹介(Vol.3)」にて解説しておりますので、併せてご覧ください。
Treasure Data『Audience Agent』の主な機能
『Audience Agent』を用いると、主に次の4点を実施できます。
- チャット形式でのテキストのやり取り
- マスターセグメントの概要取得
- マスターセグメントのデータに基づく詳細分析
- マスターセグメントに基づくセグメント生成
1.チャット形式でのテキストのやり取り
『Audience Agent』を導入すると、AIエージェントとチャット形式でやり取りができるようになります。
チャット画面でテキストを入力すると、裏でプロンプトロジックが起動し、結果をテキストで表示してくれます。SQLの知識やデータエンジニアへの依存がなくとも、マーケター自身の手でCDPの機能を十分に活用することができます。
2.マスターセグメントの概要取得
『Audience Agent』は、マスターセグメントの概要を確認するために利用できます。
チャット画面で「全体分析を行う」ボタンを押下すると、データの概要を取得するためのクエリを実行してくれます。
マスターセグメントにどのようなデータが存在しているか、簡単に確認できるようになります。
3.マスターセグメントのデータに基づく詳細分析
『Audience Agent』は、マスターセグメントの概要取得だけではなく、特定の目的に絞った詳細な分析もできます。
例えば、商品カテゴリや年代ごとの売上分析などを実行してくれます。
また、データの性質や分析の目的に応じたグラフを用いて、分析結果を可視化することも可能です。
詳細分析や分析結果の可視化により、マーケティング施策のヒントが得やすくなるでしょう。
4.マスターセグメントに基づくセグメント生成
『Audience Agent』は、分析結果に基づくセグメントの提案や、実際のセグメント生成も可能です。
チャット画面の「セグメントを生成する」というボタンを押下すると、条件がプリセットされた状態のセグメント作成画面に遷移します。
チャット画面ひとつでセグメントを生成が完了するため、マーケティング施策の実行までをスピーディーに進められます。
Treasure Data『Audience Agent』の使い方/活用方法
本章では、『Audience Agent』の具体的な操作方法や、ユースケースの例を解説し、『Audience Agent』を業務で活用するまでのステップをご紹介します。
『Audience Agent』使用前の準備
『Audience Agent』を使い始める手順は、次の通りです。
- 『Audience Agent』を有効化する担当者とユーザーの権限を確認
- マスターセグメントの『Audience Agent』を有効化
- 『Audience Agent』へアクセス
それぞれの手順について、詳しく解説していきます。
1. 『Audience Agent』を有効化する担当者とユーザーの権限を確認
『Audience Agent』を有効化する担当者と実際の利用者には、それぞれ次の権限が必要です。
担当者 |
必要な権限 |
『Audience Agent』を |
・管理者権限 ・Data Workbenchへのアクセス権 |
『Audience Agent』のユーザー |
・Audience Studioへのフルアクセス権 ・対象のセグメントフォルダの表示またはフルコントロールアクセス権 |
事前に対象者に権限が割り当てられているか確認しましょう。
2.マスターセグメントの『Audience Agent』を有効化
対象のマスターセグメントの『Audience Agent』を有効化する手順は、次の通りです。
- Data Workbenchへアクセス
- Master Segmentsへアクセスし、対象のマスターセグメントを選択
- 「LLM-Enabled Capabilities」の「Allow LLM Agents」をオンに設定
既存のマスターセグメントの『Audience Agent』を一括で有効化する方法はないため、対象のマスターセグメントを一つひとつ有効化する必要があります。
3.『Audience Agent』へアクセス
ユーザーは、次の手順で『Audience Agent』へアクセスできます。
- Audience Studioへアクセス
- 『Audience Agent』へのアクセスを有効化したマスターセグメントを選択
3. 『Audience Agent』(オーディエンスエージェント)を選択
ここまでの手順を踏むと、いよいよ『Audience Agent』の使用を開始できます。
早速、AIエージェントに質問をしてみましょう。
『Audience Agent』のユースケース例
ここでは、『Audience Agent』でインサイトを獲得し、顧客セグメントを生成する流れをご紹介します。
今回使用するデータは、アパレルショップの顧客マスター、購入履歴、キャンペーン参加履歴のサンプルデータです。
次のユースケースに沿って、AIエージェントとやり取りをしてみます。
- マスターセグメントの概要を把握
- マスターセグメントを分析し、インサイトや仮説を獲得
- 施策の実施に向けて顧客セグメントを生成
1.マスターセグメントの概要を把握
まず、マスターセグメントの全体分析を行い、概要を把握します。
AIエージェントに全体分析を行うよう依頼すると、次のように性別分布、年齢層、居住地域、購買傾向、顧客ランクの概要が返ってきました。
SQLを記述せずとも、簡単にマスターセグメントの全体像を把握できました。
2.マスターセグメントを分析し、インサイトや仮説を獲得
ここでは、『Audience Agent』でキャンペーンの結果を分析してみます。
通常、データ分析の経験が少ないマーケターが自力で顧客の属性、購入履歴をもとにキャンペーン結果を分析するのは、非常に手間がかかるでしょう。
AIエージェントに分析を依頼すると、次のようにキャンペーンごとの購入数と総売上、平均購入金額の分析結果を返してくれました。
グラフが出力されたため、キャンペーンごとの傾向を一目で確認できますね。
また、次のように今後のキャンペーン戦略に向けたインサイトを提示してくれました。
このように、『Audience Agent』を使用すると、データ分析の経験が少ないマーケターでも簡単にキャンペーン戦略のヒントを得ることができます。
3.施策の実施に向けて顧客セグメントを生成
最後に、キャンペーン戦略のヒントをもとにAIエージェントに顧客セグメントを生成してもらいます。
ここでは、高額商品の販売促進に効果的なキャンペーンに着目し、対象の顧客セグメントを生成することにします。
すると、次のセグメントルールを提案してくれました。
- 過去1年間に50,000円以上の高額商品を購入した顧客
- 過去1年間にアクセサリーカテゴリーでの購入履歴がある顧客
- 過去1年間の平均購入金額が全体平均(12,878円)以上の顧客
- 直近3ヶ月間で2回以上の購入がある顧客
特定期間内の合計購入金額や購入カテゴリー、購入頻度など複数の条件をもとにセグメントルールが提案されたため、非常に細かくパーソナライズされたセグメントを生成できそうですね。
このまま「セグメントを生成する」を選択すると、セグメントルールの各項目が自動入力された画面に遷移します。
セグメントルールの項目を一つひとつ手入力する必要がなくなるため、入力ミスや工数の軽減につながるでしょう。
このように、『Audience Agent』でのやり取りだけで、マスターセグメントの概要把握から分析、顧客セグメント生成まで完了しました。
まとめ
ここまで、Treasure Data『Audience Agent(オーディエンスエージェント)』の主な機能や活用方法について解説してまいりました。
Treasure Dataの『Audience Agent』は、AIエージェントとリアルタイムのチャット形式でやり取りができる機能です。
SQLの知識やデータエンジニアへの依存がなくなり、スピーディーにCDPの機能を最大限活用することができるでしょう。
電通総研は、データマネジメントのプロフェッショナルとして、マーケター自身の手でデータ利活用できる基盤の構築をご支援しております。
豊富なデータ基盤の構築実績に基づくノウハウを体系化したサービスをご提供しておりますので、データ活用や業務の効率化でお悩みの際は、是非、電通総研までお声掛けください。
◆ お問い合わせページ:https://data-management.dentsusoken.com/treasure-data/inquiry/
*本記事は、2025年9月1日時点の情報を基に作成しています。
製品・サービスに関する詳しいお問い合わせは、電通総研のWebサイトからお問い合わせください。
【筆者】
氏名:宮島 寧々(みやじま ねね)
経歴:
2024年、株式会社電通総研入社後、
デジタルマーケティング領域のソリューションエンジニアとして
Treasure Dataを中心としたマーケティングプラットフォーム開発に従事。